この2年ほど、ピンクダイヤモンドをお求めになる方が続き、”理想のピンクダイヤモンド”を探して、探して、探しまくっていました。
とっても、とっても、エキサイティングで幸せな、ピンクダイヤを求める旅でした。
今回のご依頼主Kさまは、
「子どもの頃から何故かピンクダイヤモンドに憧れていて、ずっと“こんなピンク色がいいな”というイメージがあったんです」
とお話ししてくださいました。
そんな可憐な少女の頃からの夢ならば、色も、大きさも、輝きも、できる限り理想の一石を見つけて、ぜったいに叶えたいじゃないですか。
ひとくちにピンクといっても、ピンクダイヤモンドの色は、とても細かく分類されています。
色の濃さは、ファンシーライト、ファンシー、ファンシーインテンス、ファンシーディープ、ファンシーダークなどに分かれ、一般的には濃く鮮やかなものほど高く評価されます。
さらに色味も、
・正統派のど真ん中ピンク
・紫を感じるパープリッシュピンク
・落ち着いたブラウニッシュピンク
・元気な印象のオレンジッシュピンク
など、実にさまざま。
そしてどの色も魅力的で、悩ましいんです。

Kさまが思い描いていたのは、パープル寄りでもオレンジ寄りでもない、正統派のど真ん中、淡く優しいピンクでした。
となると、狙うのは「ファンシーライトピンク」です。
さらに、お手元に乗せたときの存在感を考えると、4〜5mmくらいは欲しい。
「そうなると、0.7カラット前後がいいですね〜」
……なんて私が軽く言ってしまったばかりに、ここから長い長いピンクダイヤ探しの旅が始まりました。
ピンクダイヤモンドは、地球の奥深くで想像もできないほど強い圧力を受け、結晶構造に歪みが生じることでピンク色に見えるとされています。
とても特殊な誕生の背景を持ち、大きな原石のまま発見されることは、極めて稀です。
サイズが大きくなるほど産出量は一気に減少し、0.5〜0.6カラットを超えるものは、一般のジュエリー市場ではほとんど見かけません。
そのクラスになると、サザビーズやクリスティーズなど海外の高級オークションで、資産価値の高い宝石として取引されることもあります。
さらに、世界有数のピンクダイヤモンド産地だったアーガイル鉱山が閉山した現在、市場に出回る大粒のピンクダイヤは、過去に採掘されたものやコレクターが手放したものが中心。
世界中のバイヤーが、限られた石を探し求めているような状態です。

当初は、Lunaルナリングに仕立てる予定だったため
・0.7ct前後
・ファンシーライトピンク
・ラウンドブリリアントカット
という条件で探し始めましたが、当然ながら、この条件では簡単には見つかりません。
まず手始めに、ダイヤモンドの取引先を10社ほど、半年かけて見て回りました。
ですがよく言われたのが、
「何十年も取引してるけど、0.7ctのラウンドカットなんて見たことないよ」
という言葉。
もし存在しても、希少すぎて市場にはなかなか出てこないそうです。
実は半年の間に、2石ほど見つかりました。
でもピンクが淡すぎたり、内包物が若干、目立っていたり。
「子どもの頃から憧れていたピンクダイヤ」
その夢を託す一石としては、どうしても「これだ」とは思えず、お見送りしました。
そもそもピンクダイヤモンドをはじめとするファンシーカラーダイヤには、ラウンドブリリアント以外のカットが施されることが多くあります。
ラウンドブリリアントは、光を美しく拡散させることに優れたカットです。
そのためピンクダイヤに施すと、光が広がることで色が溜まりにくくなり、ピンクが淡く見えてしまうのです。
色の濃さは価値を決める大切な要素ですから、あえてラウンドにすること自体が、とても贅沢な選択なんですよね。
YUKINEでは2017年のコレクション「Lunaルナ」で、ラウンドブリリアントカットのピンクダイヤを使ったジュエリーをいくつか制作しました。
(当時は「New Moon 新月」という名称でしたが、海外出店に合わせて変更しました。)

Material:ピンクダイヤモンド、K18PG

Materiai:ピンクダイヤモンド、K18PG
アーガイル鉱山もまだ閉山前で、もちろん希少ではありましたが、今ほど探すことが難しくはなかったんです。
あのときピンクダイヤモンドの「Luna」をお迎えくださった皆さまは、本当に良いセレクトだったと思います!
色(color)、カット(cut)、重量(carat)、サイズ、そこに自分が折り合いのつけられる価格。
理想のピンクダイヤモンドを見つけ出すことは、もはや時間が経つほどに難しくなります。
そこで今回は、条件を少し広げることにしました。
カラーはもう一段階濃い「ファンシーピンク」で、カラットは0.6ct以上。
それでも難しい条件ですが、Kさまとのエネルギーバランスを考えたときに4,5~5mmは欲しかったため、0,6t以上というのだけは譲れませんでした。
デザインはお任せいただいていたので、カットについては、オーバル、ペアシェイプ、エメラルド、クッション、プリンセスと可能性を広げて探しました。
それからさらに半年ほど探し続け、ようやく出会えたのが、0.673ctのファンシーピンクダイヤモンド。プリンセスカットの一石です。
大きさは約5mm。ひと粒でも目を引く、華やかな存在感がありました。

幅広く考えていたとはいえ、実はプリンセスカットは、私もKさまもまったく想定していませんでした。
でも、不思議なくらい惹かれたんです。
そして「プリンセス」という名称も、私がリーディングした際に観えた、王室の過去世を持つKさまにとって、とても意味のある出会いのように感じました。
「魂に響いてくる石か。」
「これは、依頼主さまの石だ。」
そう感じられるかどうか。
とても抽象的ですが、これは私が石を選ぶときに、何よりも大切にしていることです。
その感覚をもとに選んだのが、このピンクダイヤモンドでした。
デザインもすぐに決まりました。
Kさまの雰囲気に合わせて、品格を感じる、正統派の、少しのモダンさも感じられるデザインに。
とても上質なDカラーのハーフムーンカットのダイヤモンドを合わせて、Kさまへご提案し、一緒に配置を相談しながら、世界にひとつだけのリングを考えていきました。
完成を楽しみにしながらも、無事に仕上がるまでは緊張が解けませんでした。
毎回、どのジュエリーもそうなのですが、今回は私自身も今まで扱った中で最も大粒のピンクダイヤモンドでしたので、なお一層、ドキドキしながら完成を待ちました。

-女王のピンクダイヤモンド-
Materiai:ピンクダイヤモンド、ダイヤモンド、K18YG、Pt900
完成したリングをご覧になったKさまは、
「ルースで見ていたときよりも、ピンクダイヤモンドが大きく、光り輝いています。ピンクゴールドの石枠のおかげで、ピンクがより美しく映えていて、よかったです!」
と、とても感激してくださいました。
さらに、ジュエリーに仕立てたことで、宝石のエネルギーがより強く、大きく感じられることにも驚かれていました。
私は、宝石はジュエリーになることで、石だけのときには見えなかった新しい表情や力が引き出されると感じています。
なかでもメタルは、宝石のエネルギーを受け止め、響き合う存在。互いの魅力が掛け合わさることで、宝石の力をいっそう豊かに引き出してくれます。
今回のピンクダイヤモンドも、ピンクゴールドとプラチナに包まれたことで、その美しさとエネルギーが響き合い、ひとつのジュエリーとして花開いたように感じています。
リングには、「Queen’s Pink Diamond-女王のピンクダイヤモンド」と名付けました。


最後に。
ピンクダイヤは色の幅がとても広く、惹かれる色も人それぞれです。
もし皆さまがピンクダイヤモンドを選ぶ機会があれば、条件や市場価値だけではなく
「このピンクに惹かれる」
「見ているだけで、着けているだけで幸せ。」
そんな気持ちを、一番大切にしていただけたらと思います。
もちろん、極めて希少で価値の高い宝石ですが、業者でない限り、投資商品として簡単に売買できるものでもありません。
「この石が好き。」とストレートに思えること。
自分が惹かれ、響き合える一石と出会い、魂のストーリーを結晶化したジュエリーとなることが、何より価値のあることなのだと私は思っています。
デザイナー 雪音 りえ


